認知神経心理学に多大に貢献した「HM」、82歳で死去

 脳科学や「記憶」に関する教科書,文献には絶対に載っている超有名人なのだが……死去したらしい.当然ながら,被験者としての名前はイニシャル語られ伏せられるのだが,「Henry Gustav Molaison」という名前だったのか.

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 その他,この分野だとフィネアス・ゲージ(Phineas Gage)における臨床例が有名だろうか.これは,プランニングに関する重要な臨床例なのだが,フィネアス・ゲージは, 前頭連合野, 特に左半球の前頭連合野の外側部や左側の下前頭回, 眼窩部が大きく損傷した.それによって,プランニングの能力を失った. このことは, プランニングや推論という思考は主に上記部位によって発現されると考えられるし,前頭連合野の背外側部における障害として, 発散的思考の障害が挙げられる.このことから, ヒューリスティックな思考においては, 前頭連合野背外側部がその機能部位であると考えられる.

 臨床学的知見から得られるものは大きい.特に,破壊臨床例から得るものは大きいのだが,いくら科学の発展のためとはいえ,人の機能を無闇に奪うわけにはいかない.なので,事故によって機能を損失した方などは破壊臨床例として重宝されるわけだ.

 科学に多大なる貢献をした「H.M.」さんに敬意を表しつつ,ご冥福をお祈りしたい.