39歳を過ぎるとミエリン鞘の減少によって脳機能が衰えていく

 脳の中では,絶えずミエリン鞘(myelin sheath,髄鞘)が死に,また再生され・・を常に繰り返しており,そのバランスは39歳まで保たれており,脳内の神経回路網における髄鞘形成は完全な状態で保たれてるのだが,39歳を過ぎると髄鞘が死滅するのに対して修復が追いつかなくなり,脳機能が損なわれて,具体的には運動能力や認識機能が落ちていくらしい.
 僕はまだ流し読みしかしてないけども,けっこう詳しくUCLA Newsroomに書かれている.論文のほうは・・ちょっと探してみたんだけど,見つからなかった(何号なのか分からない)ので読んでない.

 脳の伝達スピードのピークは39歳 - Slashdot
 Physical decline caused by slow decay of brain's myelin - UCLA Newsroom

速い動きを行うためには、神経細胞が情報を伝達する際に高い活動電位周波数を要するが、そのためには髄鞘が破損されずに完全である必要がある。しかし年齢によって髄鞘の破壊が進むことで運動能力も落ちると考えられるとのこと。記憶などの機能も高い周波数を要するため、同じく影響を受けると考えられるそうだ。
     脳の伝達スピードのピークは39歳 - Slashdot

 Slashdotの記事は非常に分かりやすく,要点がまとめられてて良いのだが,ちょっと間違ってる(誤訳している)と思われる部分があるので注記しておくと,Slashdotの記事では"frequency"を"周波数"という風に訳しているけど,これは"周波数"ではなく"頻度"と訳されるべき.まあ・・周波数でもいちおうニュアンスは通じるけどねえ・・・.いちおう,原文から関連する内容の部分を下に引用しておく.

It's well known that the speed of a movement increases with the frequency of neuronal action potential (AP) bursts in the brain. AP is an electrical discharge that travels over the axons connecting nerves, whether it's Ken Griffey Jr.'s brain ordering his arm to throw or the brain telling a finger to tap. Fast movements require high-frequency AP bursts that depend on excellent myelin integrity over the entire axon network involved in controlling that movement.
     Physical decline caused by slow decay of brain's myelin - UCLA Newsroom

 運動速度は神経活動電位のバースト*1の頻度ともに増加する.活動電位(Action Potential;以下AP)は神経を繋ぐ軸索を伝わる放電である,---中略---,速い運動は高頻度のAPバーストが必要であるが,それにはその動きを制御するのに関わるすべての軸索ネットワークにおける優れたミエリン鞘のインテグリティによって決まる.
 まあ,ミエリン鞘が高次脳機能において非常に重要な働きをしているのは言うまでもないことであり,例えば若者が切れやすい・成人に対して理性的判断に欠けるなどの諸事は,高次の脳機能を司る部位,例えば前頭連合野において髄鞘形成が非常に遅いために(完了は20歳前後とも云われる),若者の「キレる」という現象にも深く関わりがあると考えられている.そんな,髄鞘なのだが……まさか,年齢とともにこのような相関が見られるとは…….
 歳は取りたくないですね.*2

*1:バーストとは複数・高頻度のパルスを指す

*2:まあ,猶予はまだまだ18年近くあるけど