「コンピュータを思考で操作」は実用段階に・・は言いすぎ

 「コンピュータを思考で操作」は実用段階に - Slashdot

 これ系の研究はいろいろな方法で行われていて,例えばNIRS使ってそれをトリガーにして(/.のコメ欄にあるやつ)やる方法なんかがあるんだけど,今回のこれは,おそらく事象関連電位(Event-Related Potential: ERP)を利用した方法なんじゃないかと思う.論文を読んでいないので,もしかしたら違うかもしれないが,記事の図を見る限りでもEEG計測しているようにしか見えないので,おそらくERGを用いてると推察される.
 ERPを用いてコンピュータにおける文字入力を行う・・なんてのは,けっこう昔から行われているもので,だいたい1文字打つのに1分程度かかる程度のシステムであれば簡単に出来る.文字を単体で表示していって(視認される程度であればいいので表示といっても瞬間的だが),それに対するERPから入力したい文字を推定する.脳波計測を行えて,ERPに関して基礎的な知識がある人間ならば,それくらいのシステムは簡単に構築できる.これが難しいのは,やはり入力時間の短縮なのだが,20秒程度であれば既にいくらでも関連する論文は挙がっているし,10年以上前からそういう論文は既にある.
 正直なところ,この方法は全然新しくないし,ERPを用いたシステムではどうしても時間がかかるのは仕方の無いことなので,これを一般に実用化するというのは無理だろうなーと思う.それに,「脳波でマウスを動かす」っていうオモチャがあるけど,あれはけっきょく厳密には脳波で動かしてるわけではなくて,脳波や筋電・瞬目アーチファクトなど,電極から得られた信号を区別することなく1つの入力信号と見て,ある方向に対してある入力信号を割り当てる(キャリブレーションする)というような形を取っているんだけど,ERPの場合はそういうわけにはいかないので,ERPを用いた文字入力装置というのは,オモチャとしても出てくることはないだろう.けっきょく,10年以上前から1文字/分の時間が変わらないのだから,今後もそう発展するとは思えない.